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オントロジー・ナレッジグラフ・RAG・GraphRAGの違いと選び方

パステルのリング惑星と軌道を背景に「オントロジー・ナレッジグラフ・RAG・GraphRAGの違いと選び方」を配置した記事カバー パステルのリング惑星と軌道を背景に「オントロジー・ナレッジグラフ・RAG・GraphRAGの違いと選び方」を配置した記事カバー

この記事で学べること

  • オントロジー、ナレッジグラフ、RAG、GraphRAGがそれぞれ管理する対象
  • 同じ業務上の質問を、意味・事実・文章・関係経路の4つの役割へ分ける方法
  • 生命科学、Web検索、社内検索、供給網分析での使われ方
  • 答えがある場所と追う関係の深さから、最小構成を選ぶ方法
  • AIが検索先を選ぶ場合に、人が管理する権限と根拠

オントロジー・ナレッジグラフ・RAG・GraphRAGは知識を扱う役割が異なる

オントロジーは言葉の意味をそろえ、ナレッジグラフは個別の事実とつながりを記録し、RAGは質問に関係する文章を探し、GraphRAGは複数のつながりをたどって回答材料を集めます。名前は似ていますが、同じ目的を競う製品ではありません。最初に役割を分けると、解きたい質問に必要な仕組みだけを選べます。

この記事では、「オントロジー、ナレッジグラフ、RAG、GraphRAGを、解きたい質問と運用条件に応じてどう使い分けるべきか」という問いに焦点を当て、選択を分ける比較軸、向いている条件、選択後の確認事項を扱います。

最後まで読むと、「オントロジー、ナレッジグラフ、RAG、GraphRAGを、解きたい質問と運用条件に応じてどう使い分けるべきか」という問いを、自分の状況に照らして判断するための材料を持ち帰れます。

同じ契約の質問でも、意味・事実・文章・関係経路で担当が分かれる

会社の契約について質問する場面を考えると、役割の違いが見えます。オントロジーは「顧客」や「契約」が何を指すかを決め、部署による解釈のずれを減らします。

情報科学で広く参照されるTom Gruberの説明では、対象領域の概念、関係、区別を定義し、用語を一貫して使うための意味と形式的な制約を与えます。[1]

ナレッジグラフは、「A社が契約123を持つ」「B社はA社の子会社」といった個別の事実を、出所とともにつなげて記録します。

ナレッジグラフ研究の包括的な整理でも、記録形式だけでなく、どの種類の情報を持つかという設計、同じ対象の見分け方、情報の背景、品質管理が主要な論点として扱われています。[2]

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、質問に関係する外部情報を検索し、その情報を大規模言語モデルへ渡して回答を作る方式です。2020年の原著論文では、モデル内部の知識と、Wikipediaの文章を検索する外部の索引を組み合わせました。[3]

RAGの中心は特定の製品ではなく、「質問に関係する文章を探し、その文章を回答づくりへ渡す」という役割です。

GraphRAGは、グラフの関係やまとまりを検索に利用するRAGの一群です。Microsoft ResearchのGraphRAGは、文章から対象と関係を抽出し、関係の近い対象をグループ化して要約を事前に作ります。

質問時は、特定の対象から関係をたどる検索と、文書群全体の主要テーマを捉える検索を使い分けます。[4][5] 既存の業務ナレッジグラフを直接たどる方式もGraphRAGと呼ばれるため、名称だけでなく「何の関係を、誰が作り、どう検索するか」を確認する必要があります。

同じ「A社の契約」を扱っても、4つの役割は次のように分かれます。この表は本記事で使う整理であり、特定製品の公式分類ではありません。

概念管理するものA社の契約での例直接は担わないこと
オントロジー用語の意味、種類、関係、制約顧客、契約、子会社の意味と、「顧客が契約を保有する」という関係を定義するA社の最新契約を登録すること
ナレッジグラフ個別の対象、属性、関係、出所A社が契約123を保有し、B社がA社の子会社であるという事実を記録する回答文を生成すること
RAG質問に関係する情報の検索と回答への受け渡し契約123と解約規定の文章を探し、根拠とともに回答へ渡す文書にない親子会社関係を保証すること
GraphRAG関係経路や文書群のまとまりを使う検索A社から子会社、各契約、関連事故までをたどり、グループ全体のリスク材料を集める抽出した関係を無条件に正式な事実と認定すること
この表は横方向にスクロールできます。キーボードでは、表にフォーカスして左右の矢印キーを使用してください。

オントロジーだけを作り、個別データをまだ登録しない構成もあります。形式的なオントロジーを持たない小規模なナレッジグラフや、グラフを使わないRAGも成立します。

Microsoft方式のように検索専用のグラフを文章から作るGraphRAGもあります。したがって、GraphRAGを採用しても、承認済みの企業ナレッジグラフまで完成するとは限りません。

一つの質問を中心に、意味をそろえる本、事実を結ぶ街、文章を探す棚、関係をたどる道が役割分担する知識ワークショップ

生命科学・Web検索・社内検索・供給網分析で担当する仕事が見える

生命科学、Web検索、社内検索、供給網分析では、4つの仕組みがすでに異なる仕事を担っています。利用例を比べると、定義、事実、文章、関係経路のどれを管理しているかが見えてきます。

Gene Ontologyは生物学の用語と関係を分野横断でそろえる

Gene Ontologyは、遺伝子産物の分子機能、関与する生物学的過程、細胞内の場所を共通の概念で表す知識基盤です。オントロジーが生物学的な種類と関係を定義し、個々の遺伝子産物には根拠資料と証拠の種類を伴う注釈が付けられます。

公式サイトは、大規模な分子生物学・遺伝学の実験を計算機で分析する基盤として利用されていると説明しています。[6]

この例で重要なのは、用語集を作って終わらない点です。共通定義、個別データとの対応、根拠、更新手続きを一緒に運用することで、研究機関や生物種が異なっても分析結果を比較しやすくしています。

Googleのナレッジグラフは文字列を現実の対象へ結び付ける

Googleは2012年、日本語検索にもナレッジグラフを導入しました。同じ文字列が映画、都市、人物など複数の対象を指す場合に候補を分け、対象の要約や関連作品を検索結果に表示する用途です。[7]

ここでは、現実の対象を識別し、属性と関係をたどれることが、単純なキーワード一致との違いになります。

Morgan Stanleyは社内文書検索と評価を組み合わせる

OpenAIの事例によると、Morgan Stanley Wealth ManagementはAI @ Morgan Stanley Assistantを運用しています。金融アドバイザーが社内知識を検索するための仕組みです。

同社は実務質問を使った評価、専門家による回答確認、日次の回帰テスト(以前は正しかった回答が更新後も正しいかを調べる検査)を行っています。文書群の拡大に合わせた検索方法の調整も続けています。[8]

RAGの価値は、モデルへ文書を接続した時点で確定するわけではありません。どの文書を返すか、回答が根拠に沿うか、更新後も同じ質問へ正しく答えるかを継続的に評価する運用が、実用性を左右します。

リネアは取引先を多段でたどるGraphRAGを開発している

AWSが2025年に公開した事例では、株式会社リネアが企業情報、取引関係、ニュースなどをグラフへまとめ、自然言語の質問から複数段階の供給関係を調べるサービスを開発しています。Amazon Neptuneで企業間の関係をたどり、Amazon Bedrockを質問の解釈と回答に使う構成です。

公開時点では開発段階で、2027年度の本格導入へ向けた取り組みと説明されています。[9]

この事例は、GraphRAGが必要になる質問の形を示しています。1社の説明文を探すだけでなく、直接の取引先、その先の供給元、関連ニュースまで関係をたどる必要があるため、文章の類似度だけではなく関係経路が検索対象になります。

生命科学の共通定義、対象を見分ける検索、社内文書の確認、供給網の関係追跡を一つの学習路で比べる場面

答えが文章・関係・全体傾向・正確な集計のどこにあるかで選ぶ

導入判断では、データ形式より先に「答えはどこにあり、何をたどれば到達できるか」を確認します。次の表は、最初に選ぶ候補と見送る条件をまとめたものです。

概念向く用途向かない、または優先度が低い用途
オントロジー部門ごとに異なる用語をそろえる、複数システムで同じ意味と制約を再利用する、明記されていない分類を規則から導く狭い範囲の文書検索、対象領域の定義が頻繁に変わり管理責任者もいない試行、単純なタグ付けで足りる分類
ナレッジグラフ取引、依存、所有、影響などの関係を何段階もたどる、同じ対象の別名を統合する、根拠付きの関係を共有する1表で十分な一覧、定型的な集計、関係を保守する担当と出所情報を用意できない用途
RAG規程、マニュアル、契約、研究資料など、答えの根拠が文章中にある質問、更新される社内文書の検索、出典付き要約正確な集計や計算、データベースへの更新処理、文書群全体を漏れなく比較する質問、関係経路そのものが答えになる質問
GraphRAG答えが複数文書へ分散する調査、何段階ものつながりをたどる調査、文書群全体の主要テーマ、関係と原文の両方を根拠にする分析小さな文書群の単純な検索、応答の速さと費用を最優先する画面、対象や関係を安定して取り出せない資料、専門家が結果を確認できない高リスク判断
この表は横方向にスクロールできます。キーボードでは、表にフォーカスして左右の矢印キーを使用してください。

GraphRAGの公式な責任あるAI情報も、対象が豊富に登場し、全体として一つのテーマを持つ文書群に適しているとしています。複数文書にまたがる探索や主題分析を想定する一方、専門家による回答確認と根拠の追跡を求めています。[10]

どの方式も、正確な売上集計や在庫更新を代替するものではありません。数値を漏れなく集計するならデータベースの問い合わせ、業務状態を変更するなら権限と承認を備えた業務処理を使います。生成AIを使わない方が簡潔で検証しやすい処理まで、RAGへ寄せる必要はありません。

一つの質問台から、文章の棚、関係の橋、文書群を見渡す台、正確に数える道具へ答えの場所に応じて進む場面

まず小さな検索を試し、関係の不足が確認できたときだけグラフを足す

構成は、使いたい技術ではなく代表的な質問から決めます。次の判断表は、試作時の出発点として使えます。

代表的な質問最初に試す構成追加を検討する条件
「休暇申請の期限はいつか」キーワード検索またはRAG表現の違いで該当規程を見つけられないなら、検索方法と、文書のタイトルや日付などの手掛かりを改善する
「この障害に関係するサービスと担当チームはどこか」ナレッジグラフ、またはグラフ検索を含むRAG障害記録の文章も根拠に含めるならGraphRAGとして統合する
「顧客という語が部門ごとに何を指すか」用語整理と小さなオントロジー共通定義を複数システムへ反映するなら、同じ対象を示す共通番号、既存番号との対応表、変更手続きを加える
「調査報告全体に共通する論点と関係者は何か」通常のRAGを基準として評価よく似た数件の文章だけでは論点を拾い切れないなら、関係者や話題のまとまりも使うGraphRAGを比較する
「先月の製品別売上はいくらか」データベースの集計説明文を加える場合だけ、確定した集計結果を生成AIへ渡す
この表は横方向にスクロールできます。キーボードでは、表にフォーカスして左右の矢印キーを使用してください。

RAGの検索精度が低いからといって、すぐにGraphRAGへ移る必要はありません。文書の分割、タイトルや日付などの付加情報、キーワードと意味類似度の併用、検索結果の並べ替えで改善できる問題もあります。

評価で「必要な文章は見つかるが、複数の対象を結ぶ情報が抜ける」「文書群全体の傾向を問うと一部だけを答える」と確認できたとき、グラフを追加する理由が生まれます。

オントロジーも同様です。最初から全社の概念を定義するのではなく、一つの反復的な質問に必要な種類、関係、制約から始めます。複数の業務やシステムが同じ定義を必要とする範囲だけを共有資産にすると、意味の管理にかかる費用と得られる再利用性を比較できます。

既存のAWS Context Ontology Acceleratorの記事は、AWS上で意味と関係を扱う構成を説明しています。Palantir Ontologyの記事は、関係の参照だけでなく、業務状態の変更、権限、記録までを扱います。本記事は特定製品の実装ではなく、質問の形から必要な役割を選ぶことに範囲を限定しています。

小さな文書検索で始め、人が不足する関係を確認したあとに必要な橋だけを追加する学習ワークベンチ

まとめ:最初の一歩は代表質問を一つ選び、根拠と権限を人が確認すること

私の見立てでは、GraphRAGが通常のRAGを一律に置き換えるのではなく、質問に応じて文章検索、データベース、ナレッジグラフを切り替える構成が増えます。短い規程確認には文章検索が向き、影響範囲の調査には関係経路が役立ち、正確な集計にはデータベースが必要です。

AIが検索先を選ぶ場合も、関係が記録されていることと、その情報を見たり変更したりする権限は別です。人が閲覧範囲、回答の根拠、変更前の確認を管理しなければなりません。MicrosoftのGraphRAGも研究手法を示す実装であり、索引作成の費用や版変更に注意し、小さく始めるよう案内しています。[11]

最初に行うのは製品選定ではありません。実際に答えたい質問を一つ選び、答えが一つの文章にあるのか、複数の対象を結ぶ関係にあるのか、文書群全体の傾向にあるのかを分類します。通常の検索やRAGで正しく答えられるなら、その小さな構成を維持します。

単純な一覧、正確な集計、確定した業務更新が中心なら、データベースや既存の業務処理の方が適しています。グラフを保守する責任者、根拠の追跡、権限、継続評価を用意できない場合も導入範囲を広げません。

AIが質問を文章、関係、集計へ振り分け、人が権限ゲートと根拠を確認して次の質問へ記録を戻す場面

参考文献

  1. Tom Gruber, Ontology, 2009
  2. Aidan Hoganほか, Knowledge Graphs, 2020年
  3. Patrick Lewisほか, Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks, 2020年
  4. Darren Edgeほか, From Local to Global: A Graph RAG Approach to Query-Focused Summarization, 2024年4月
  5. Microsoft, Query Engine
  6. Gene Ontology Consortium, The Gene Ontology Resource
  7. Google, ナレッジグラフ “モノ”を認識する検索エンジンに向けて, 2012年12月5日
  8. OpenAI, Morgan Stanley uses AI evals to shape the future of financial services
  9. Amazon Web Services, 株式会社リネア様のAWS生成AI事例:GraphRAGで実現するサプライチェーンリスク検知と管理への取り組み, 2025年10月24日
  10. Microsoft, GraphRAG: Responsible AI FAQ
  11. Microsoft, GraphRAG

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