AIFXとは:AI生成物の作成記録と権利確認の違い
この記事で学べること
- AIFXと画像向けのAIFIは、AIで作った完成物と、作成者・利用したAI・作成日時などの記録を一緒に受け渡すための仕組みです
- 作成記録がそろっていても、その画像を広告や販売に使えるとは限らず、ファイルの変更、利用する権利、公開の承認はそれぞれ確認が必要です
- 企業で利用する際は、作成記録と社内の確認結果を同じ制作物・同じ版に結び付け、必要な証拠や承認が不足している場合は公開を止める運用も必要です
AIFXの役割と対象範囲
AIFXは、AIで作った画像や動画と、その作成記録を一緒に受け渡すための公開されたコンテナ規格です。画像向けのAIFIでは、画像本体と作成記録を1つのZIPファイル(複数のファイルをまとめて保管・受け渡す形式)にまとめます。これにより、受け取った側も記録を確認しやすくなります。[1][2][3]
参照資料の公開状況:2026年9月21日の確認時点で、AIFXの公式GitHub組織ページは公開されています。一方、本記事が参照したAIFX DesktopとAIFI Standardの個別リポジトリは公開アクセスできません。[2][3] 以下の個別仕様は、原記事の更新時(2026年9月16日)に公開されていた資料に基づきます。導入時は、公式資料の再公開や後継仕様を確認してください。
ただし、作成記録を確認できることと、その制作物を利用・公開してよいことは別です。 記録があっても、作成者の本人確認や契約の有効性、今回の用途での利用許可まで証明できるわけではありません。
AIFXで確認できる範囲と、企業側で確認すべき範囲を分けると、作成記録の管理をどこまで自動化し、どこから人が判断する必要があるのかを考えやすくなります。
AIFIに含まれる画像と作成記録
必須ファイルと任意の情報
AIFIで必須となるのは、画像本体とmanifest.json(作成情報を決まった項目で記録するファイル)です。manifest.jsonには、作成者、作成日時、使用したAIなどを記録します。[3]
必要に応じて、次の情報も同梱できます。[3]
- プロンプト(AIへ渡した指示文)
- モデル(生成に使ったAIの種類や版)に関する情報
- ライセンス(利用を許された条件)に関する情報
画像と管理表を別々に保管すると、画像を複製したり、形式を変換したり、外部の制作会社へ渡したりする間に、どの記録がどの画像に対応するのか分からなくなりがちです。
1つのZIPファイルにまとめれば、完成画像と作成記録を同じ管理番号・更新番号で受け渡せます。確認用のソフトウェアでは、必須項目がそろっているかも機械的に検査できます。[1]
ハッシュによるファイルの照合
ファイルが変わっていないかを確かめるために使うのがハッシュです。ハッシュはファイル内容から作る照合用の値で、内容が変わると値も変わります。[1][2]
ただし、ハッシュで確かめられるのはファイルの一致です。画像に写っている内容の正しさや、利用する権利まで確認できるわけではありません。
機密情報を含むプロンプトの保管
プロンプトは、常に全文をZIPファイルへ入れればよいとは限りません。顧客情報、未公開の商品情報、社内向けの指示が含まれる場合があるためです。
その場合は、業務上必要な人だけが原文を読める場所に保管します。ZIPファイルには、原文の保存先、要約、閲覧できる人、削除予定日だけを記載する設計も必要です。
作成記録・ファイル変更・利用権・公開承認の違い
AIFXでは、作成者が自分で記録した著者情報をSelf-Declared Authorship(作成者自身が記録した著者情報)と呼びます。これは著作権を認定するものではなく、独創性や本人確認を証明するものでもありません。また、AIFX自体には、不適切な内容を削除したり、違反した利用を実際に止めたりする役割はないと明示されています。[1][2]
そのため、確認すべきことを次の4つに分けて考えると、担当者と仕組みの役割が明確になります。この分類はAIFXの公式分類ではなく、本記事による整理です。
| 確認の種類 | 確認する内容 | 主な証拠 | 主な担当 |
|---|---|---|---|
| 作成記録 | 誰が、何を、どの条件で作ったと記録しているか | 作成者、モデル、日時、入力情報 | 作成者・制作担当 |
| ファイル変更の確認 | 記録した後にファイルが変わっていないか | ハッシュ、更新番号、照合結果 | 照合用の仕組み・運用担当 |
| 権利確認 | 入力素材や生成物を、予定している目的に使えるか | 契約、同意、利用許可の条件、権利者の確認記録 | 法務・権利担当 |
| 公開承認 | ブランドや用途に照らして公開してよいか | レビュー結果、承認者、利用制限 | ブランド担当・事業責任者 |
作成記録の確認は、誰が残したのか分からない記録を保管することを防ぎます。ファイルの照合は、気付かないうちに別のファイルや変更版へ置き換わることを防ぐためのものです。権利確認では許可のない素材や用途での利用を防ぎ、公開承認では責任者の承認なしに公開されることを防ぎます。
AIFXが直接役立つのは、主に作成記録の受け渡しと、ファイル変更の確認です。利用条件の情報も運べますが、次のことまでは自動で証明できません。
- 添付された契約が有効であること
- 記録を残した人が、その制作物の権利者であること
- 人物の顔や声について得た本人の許可が、今回の用途も含んでいること
こうした判断には、社内の権利確認や公開承認の記録が必要です。担当者を定めるとともに、確認が終わっていない場合に利用や公開を止める条件も設けます。
制作物と社内確認を結ぶ管理記録
共通の管理番号と更新番号
作成記録と権利資料がそろっていても、それぞれが別の画像や古い版を指していたら、公開する画像を確認したことにはなりません。AIFI内の情報と社内の確認結果を、同じ制作物・同じ版に結び付ける必要があります。
そのために使うのが、asset_id(制作物ごとの管理番号)とasset_version(確認対象の版を示す更新番号)です。
本記事では、この2つの番号で作成記録や権利資料、承認結果をまとめたものを「AI生成アセット証拠パケット」(AIで作った制作物について、作成・権利・承認の証拠をひも付けた一式)と呼びます。これは企業向けに本記事で提案する管理方法であり、AIFXの公式仕様ではありません。
必要な記録と担当者
次の表は、最低限残しておきたい内容と担当者を整理したものです。担当者は、情報を記録・確認し、不足していれば次の工程へ送らない責任を持ちます。
| 確認項目 | 最低限残す内容 | 担当者 |
|---|---|---|
| 制作物の識別 | asset_id、asset_version、ファイル形式、ハッシュ | 制作管理担当 |
| 作成状況 | 利用したAIサービス、モデルの種類と版、作成日時、作成者による記録 | 制作担当 |
| 入力素材・参照情報 | 元の素材、参照先、プロンプトの保管場所 | 制作担当・情報管理担当 |
| 権利資料 | 契約、利用許可の条件を示す資料、人物の顔や声の利用に関する本人の許可、有効期限 | 法務・権利担当 |
| 利用条件 | 商用利用(販売や広告など利益を得る目的での利用)の可否、利用地域、掲載場所、内容の変更や別用途への再利用の条件 | 法務・権利担当 |
| ファイルと記録の検査 | 必須項目の検査結果、ハッシュの一致、検査時刻 | 確認用の仕組み・運用担当 |
| 人による判断 | ブランドや事実関係の確認結果、対象地域・文化に合う表現かどうか、承認者 | ブランド担当・事業責任者 |
| 次の工程への引き継ぎ | 配信先、AI利用など利用者に表示する内容、誰が何を決めたかを後から確認できる記録 | 配信担当 |
記録の不足や不一致への対応
記録する項目と併せて、不足が見つかった場合の対応も決めます。
| 確認項目 | 防ぎたい問題 | 不足や問題がある場合の対応 |
|---|---|---|
| 制作物の識別 | 別の制作物や更新版との取り違え | 配信・納品を止める |
| 作成状況 | 作成の経緯が分からない制作物の利用 | 再確認するか、用途を制限する |
| 入力素材・参照情報 | 出所不明の素材の利用 | 出所が分からなければ公開を止める |
| 権利資料 | 許可や期限を確認しないままの利用 | 権利担当へ確認を依頼し、確認が終わるまで利用を止める |
| 利用条件 | 許可された範囲を超える利用 | 許可範囲外では利用しない |
| ファイルと記録の検査 | 記録が不完全なファイルや、置き換わったファイルの配信 | 配信対象から外し、再確認する |
| 人による判断 | 責任者の承認がないままの公開 | 承認前は公開しない |
| 次の工程への引き継ぎ | 責任者や判断記録がないままの受け渡し | 引き継ぎ先がなければ保留する |
ここで大切なのは、情報が記載されていることと、確認が済んでいることを区別することです。
たとえば、利用条件の欄に説明があっても、それだけでは「権利確認済み」にはできません。契約書の保存先、対象の制作物、有効期限、許可された用途が対応している必要があります。
同様に、ハッシュが一致していても、分かるのは記録したファイルと同一であることです。内容が合法であることや、事実として正しいことを示す証拠にはなりません。
既存の素材管理への導入と留意点
導入範囲と3つの管理項目
最初からすべての制作物を新しい形式に変換すると、効果を確かめる前に、制作担当者の負担やシステムの改修規模が大きくなります。導入を検討する際は、外部に公開するAI生成画像のうち、1種類を対象にする方法があります。
既存の素材保管、案件管理、承認システムに追加する項目は、次の3つです。
- 制作から配信まで共通の識別情報:同じ制作物・同じ版には、工程が変わっても同じ
asset_idとasset_versionを使います - 証拠の保存先と照合用の値:証拠パケットの保存先とハッシュを、既存の管理記録に記載します
- 配信を止める条件と手順:権利が不明な場合、ファイルや記録の照合結果が合わない場合、承認期限が切れた場合の対応を定めます
仕様変更と長期保管への備え
原記事の更新時に公開されていたAIFX Desktopの資料では、AIFXは活発に開発中であり、仕様変更や互換性を損なう変更があり得ると案内されていました。[2]
そのため、長期保管では、特定のアプリだけに依存しないようにします。元ファイルと作成情報の一覧に加え、確認に使ったソフトウェアの版、古い記録を新しい仕組みへ移す手順も残しておきます。
まとめ:作成記録の確認と、利用・公開の判断
AIFXとAIFIは、AI生成物と作成記録を一緒に受け渡し、必須項目やファイルの変更をソフトウェアで確認するための規格です。一方、利用する権利と公開の可否には、契約や用途の確認、担当者による承認が必要です。
企業で検討する際は、1件の制作物について証拠をまとめると、運用上の不足を確認しやすくなります。AIFI形式を採用するかどうかは、自動で記録できる情報、専門担当者の確認が必要な項目、証拠が不足したときに公開を止める担当者を既存の業務に組み込めるかで判断できます。
本記事は一般的な情報整理であり、法的助言ではありません。実務判断は専門家に確認してください。
参考文献
- AI First Exchange, AI First Exchange公式GitHub組織ページ(2026年9月21日確認)
- AI First Exchange, AIFX Desktop(2026年9月16日参照。2026年9月21日現在、公開アクセス不可)
- AI First Exchange, AIFI — AI First Image Format(2026年9月16日参照。2026年9月21日現在、公開アクセス不可)
個別仕様を実装へ利用する前に、公式組織ページで再公開先や後継仕様を確認してください。