CPUとGPUの違い
約5分
「AIの学習にはGPUが必要」「CPUとGPUは何が違うの?」——ニュースやクラウドサービスでよく見かけるこれらの言葉を正確に理解することで、コンピューターがどのように計算を行うかの土台が固まります。AIやウェブ開発の文脈でも必ず登場する概念です。
CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)はコンピューターの「脳」と呼ばれる最も重要なパーツです。プログラムの命令を一つひとつ解釈・実行し、コンピューター全体の処理を制御します。
CPUの構造
Section titled “CPUの構造”CPUは少数の高性能なコア(Core)で構成されています。
- 一般的な個人向けCPUのコア数: 4〜24コア
- 各コアは複雑な命令を高速に処理できる
- 大容量のキャッシュメモリ(素早く読み書きできる記憶領域)を持つ
- クロック周波数が高く、1つの処理を素早く完了させることが得意
CPU(8コアの例)
┌──────────────────────────────┐
│ Core 1 Core 2 Core 3 Core 4 │
│ Core 5 Core 6 Core 7 Core 8 │
│ │
│ (大きくて賢いコアが少数) │
└──────────────────────────────┘CPUの代表的な製品
Section titled “CPUの代表的な製品”- Intel Core i9・AMD Ryzen 9(デスクトップ・ノートPC向け)
- Apple M4(Mac向け。GPU機能も統合)
- AWS Graviton(クラウドサーバー向け)
CPUが得意な処理
Section titled “CPUが得意な処理”- Webブラウザの操作・文書作成・表計算など日常的なアプリの実行
- プログラムのif文・ループなど複雑な分岐処理
- OSの管理・ファイルの読み書きなどコンピューター全体の制御
- データベースへのクエリ実行など逐次的な処理
GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックス処理装置)はもともとゲームや映像の描画を高速化するために開発されたパーツです。現在はAI・機械学習・科学計算の分野でも広く使われています。
GPUの構造
Section titled “GPUの構造”GPUは大量の小さなコアで構成されています。
- 一般的なGPUのコア数: 数千〜数万コア
- 各コアは単純な計算しかできないが、同時に大量の計算を実行できる
- 並列処理(たくさんの計算を同時に行うこと)が得意
GPU(数千コアの例)
┌──────────────────────────────────────┐
│ c c c c c c c c c c c c c c c c c c │
│ c c c c c c c c c c c c c c c c c c │
│ c c c c c c c c c c c c c c c c c c │
│ c c c c c c c c c c c c c c c c c c │
│ (小さくて単純なコアが大量) │
└──────────────────────────────────────┘
※ c = 1コア(実際は数千〜数万個)GPUの代表的な製品
Section titled “GPUの代表的な製品”- NVIDIA GeForce RTX 4090(個人向けゲーム・AI処理)
- NVIDIA H100(データセンター・AI学習向け。1枚数百万円)
- AMD Radeon RX 7900 XTX(個人向けゲーム・クリエイター向け)
CPUとGPUの比較
Section titled “CPUとGPUの比較”| 比較項目 | CPU | GPU |
|---|---|---|
| コア数 | 数コア〜数十コア | 数千〜数万コア |
| 1コアの性能 | 高い(複雑な処理が可能) | 低い(単純な計算のみ) |
| 得意な処理スタイル | 逐次処理(1つずつ高速に) | 並列処理(大量を同時に) |
| 用途 | アプリ実行・OS管理・制御処理 | 画像描画・AI学習・科学計算 |
| 価格帯(個人向け) | 2万〜10万円程度 | 5万〜30万円程度 |
| 消費電力 | 65〜200W程度 | 200〜600W程度 |
直感的なたとえ
Section titled “直感的なたとえ”- CPU はベテランシェフが1人。複雑なレシピを完璧にこなせるが、一度に1品しか作れない
- GPU はアルバイトが1,000人。できる作業はシンプルだが、1,000皿を同時に盛り付けられる
どちらが「優れている」という話ではなく、目的によって使い分けるのが重要です。
AIにGPUが使われる理由
Section titled “AIにGPUが使われる理由”ディープラーニングの計算は「行列の掛け算」
Section titled “ディープラーニングの計算は「行列の掛け算」”AIの学習(ディープラーニング)では、ニューラルネットワークと呼ばれる構造を使います。このネットワークを学習させる際に行われる計算のほとんどは、行列の掛け算(大量の数値をかけ合わせる操作)です。
ニューラルネットワークの学習(簡略化)
入力データ(数値の配列)
×
重み行列(何百万〜何十億もの数値)
↓
出力結果
この掛け算を何百万回も繰り返すこの計算の特徴は「すべての掛け算が互いに独立していて、同時に計算できる」という点です。
並列処理との相性
Section titled “並列処理との相性”| CPU(8コア) | GPU(10,000コア) | |
|---|---|---|
| 行列の掛け算を1,000万回実行 | 1つずつ順番に処理 | 同時に大量処理 |
| 所要時間のイメージ | 1,000秒かかるとすると | 約1秒(10,000倍速) |
実際の例として、GPT-3(ChatGPTの前身)の学習には約350GBのテキストデータと膨大な計算が必要でした。CPU のみで行うと数百年かかると試算されているところを、数千枚のGPUを並列に使うことで数週間に短縮しました。
クラウドでのGPU利用
Section titled “クラウドでのGPU利用”個人でGPUを購入しなくても、クラウドサービスを使えばGPUを時間単位で借りられます。
| サービス | 特徴 |
|---|---|
| Google Colab | 無料でGPUを使えるノートブック環境。AI学習の入門に最適 |
| AWS EC2 p4d | NVIDIA A100搭載の高性能GPU インスタンス |
| Google Cloud GPU | NVIDIA H100など最新GPUを時間課金で利用可能 |
| Vast.ai | 個人が提供するGPUをレンタル。比較的安価 |
- CPU は少数の高性能コアで逐次処理が得意。アプリの実行・制御処理に向く
- GPU は大量の小コアで並列処理が得意。画像描画・AI学習・科学計算に向く
- AIの学習はほぼすべてが行列の掛け算であり、GPUの並列処理と相性が抜群
- クラウドサービスを使えばGPUを購入せずに利用できる
よくある質問
Section titled “よくある質問”Q: ゲームをしないのにGPUは必要ですか?
A: 普段のウェブ閲覧・文書作成・プログラミングにはCPU内蔵のグラフィック機能(iGPU)で十分です。AIの学習や画像・動画処理を本格的に行いたい場合に独立したGPUが役立ちます。
Q: AppleのMシリーズチップはCPUとGPUのどちらですか?
A: 両方です。AppleのM4チップなどは「SoC(System on Chip)」と呼ばれ、CPUとGPUを1つのチップに統合しています。CPU部分とGPU部分が同じメモリを高速に共有できるため、AI処理においても高いパフォーマンスを発揮します。
Q: CPUのコア数が多いほど良いのですか?
A: 必ずしもそうではありません。コア数が多いと並列処理に有利ですが、同時実行するアプリが少なければ活かせません。用途と予算に合わせて選ぶことが大切です。
このページの外部仕様・背景情報は、参考文献を参照してください。[1]
- MDN Web Docs, Learn web development